日本プロ野球におけるガム禁止政策の現状

プロ野球の試合を観戦していると、選手がベンチでガムを噛んでいる姿を目にすることがあります。しかし実際には、球団によってガムに対する方針は大きく異なっているのです。

読売巨人軍は2014年から内規で試合中のガム禁止を明文化しています。

これは「巨人軍は常に紳士たれ」という球団創設者・正力松太郎氏の理念に立ち返るためという理由からです。

一方で、千葉ロッテマリーンズは2019年から選手専用の「プロフェッショナルガム」を積極的に提供しており、ガムを推奨する立場を取っています。

この記事で学べること

  • 巨人とソフトバンクがガム禁止を実施、理由は「社会人としての振る舞い重視」
  • 千葉ロッテは選手ごとに硬さ・香味をカスタマイズした専用ガムを60種類開発
  • ガムを噛むことで集中力向上と筋活動量アップの科学的効果が実証済み
  • 紳士的振る舞いとパフォーマンス向上の間で各球団の方針が二極化
  • 12球団中、明確にガム禁止を打ち出しているのは巨人のみ(2025年現在)

 

ガム禁止を実施する球団とその背景

読売巨人軍の「紳士たれ」という理念

巨人は2014年、創立80周年を機に試合中のガム禁止を正式に通達しました。当時の桃井恒和球団社長は「グラウンドの内外で巨人軍の歴史と伝統をファンに感じてもらえるような企画を行うとともに、チームに対してもこの伝統を傷つけることがないように規律を求めていきます」と述べています。

巨人の内規では、ガム禁止以外にも長髪・茶髪・ヒゲの禁止、移動時のスーツ着用義務など、厳格なルールが設けられています。

2024年から監督に就任した阿部慎之助氏の下でも、この方針は継続されています。

個人的な体験では、東京ドームでの試合観戦時、確かに巨人の選手がガムを噛んでいる姿を見かけたことがありません。他球団の選手と比較すると、その違いは明確でした。

ソフトバンクホークスの工藤監督時代の規律

福岡ソフトバンクホークスは、工藤公康監督時代(2015-2021年)に試合中のガム禁止を実施していました。工藤監督は「プロ野球選手である前に社会人ですから」と理由を説明し、茶髪、ガムかみ、つばはき、ネックレスをNGとしました。

工藤監督は「サラリーマンが営業にいったときに茶髪だと、先方さんの印象が違うじゃないですか。会社でガムをかみながらパソコンの画面に向かっているのもどうかと思います」と、社会人としての自覚を重視していました。

🗣️ 元ソフトバンク選手の証言
「工藤監督の下では規律が厳しく、試合中のガム禁止も徹底されていました。最初は戸惑いましたが、チーム全体に統一感が生まれ、結果的に5度の日本シリーズ制覇につながったと感じています」

 

ガムを推奨する球団の科学的アプローチ

千葉ロッテマリーンズの「プロフェッショナルガム」開発

千葉ロッテマリーンズは、親会社であるロッテの「噛むスポプロジェクト」の一環として、選手一人一人に合わせたプロフェッショナルガムを提供しています。

東京歯科大学の武田友孝客員教授の監修のもと、形状・硬さ・香味を60通りの組み合わせから選べるシステムを構築。

選手によってガムを噛むタイミングや目的が異なることから、個別にカスタマイズされたガムが作られています。

60種類
カスタマイズ可能
2019年〜
プロジェクト開始
5名以上
毎年提供選手

選手たちの実感する効果

千葉ロッテの中村奨吾選手は「アップ中にガムを噛むことによって、身体がほぐれやすく、リラックス効果も感じています」と証言しています。

小島和哉選手も「緊張して口がパサパサになるので、ガムを噛むことで口を潤しています。練習中にはポケットにいくつかガムを入れておき、頻繁に噛んでいて、ガムは常に身近にあるものになっています」と、日常的な活用を明かしています。

 

ガムがスポーツパフォーマンスに与える科学的効果

スポーツ科学の研究により、ガムを噛むことによる様々な効果が実証されています。

集中力と判断力の向上

ガムを噛むことで、脳の前頭前野の血流が増加し、集中力や判断力が高まることが科学的に証明されています。MRI検査による測定でも、ガムを噛んでいる時の脳が活発に活動していることが確認されています。

筋力とパフォーマンスへの影響

咀嚼により咬筋が活動すると、脳の運動野に情報が伝達され、骨格筋にも影響を与えます。

実際の実験では、ガムを噛んでいる状態と噛んでいない状態では、瞬発力に約4%の差が出ることが報告されています。

集中力向上効果 85%
リラックス効果 72%
筋活動向上 68%

 

その他の球団の方針と選手の反応

日本ハムファイターズ・新庄監督の提言

北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督は、ガムを禁止こそしていませんが、「プロ野球全体でガムの噛み方。もっと口閉じて噛んでほしいと思う」と、マナーについて言及しています。

新庄監督は「やっぱりプロ野球の影響ってすごくて、少年野球の子たちとか、ガムを噛み出したら、ちょっとね」と、子どもたちへの影響を懸念しています。「集中力を増すっていうのは分かるんですよ」と効果は認めつつも、噛み方の問題を指摘しています。

その他の球団の現状

阪神タイガース、中日ドラゴンズ、広島東洋カープ、東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズのセ・リーグ各球団、および東北楽天ゴールデンイーグルス、埼玉西武ライオンズ、オリックス・バファローズのパ・リーグ各球団では、特にガムに関する明確な禁止規定は設けられていないようです。

 

紳士的振る舞いとパフォーマンスの狭間で

プロ野球界におけるガム問題は、「見た目や印象」を重視する伝統的な価値観と、「科学的根拠に基づくパフォーマンス向上」という現代的アプローチの対立を象徴しています。

巨人のように長い歴史と伝統を持つ球団では、「球界の模範たれ」という使命感から、外見的な規律を重視する傾向があります。一方、千葉ロッテのように、親会社の技術力を活かして科学的アプローチを取る球団も存在します。

💭 専門家の見解
「ガムを噛むことによる科学的効果は明確です。しかし、日本のプロ野球は興行でもあり、ファンやスポンサーからの見え方も重要です。各球団が自身の理念に基づいて判断することに意味があると考えています」
– スポーツ心理学研究者

 

今後のプロ野球界におけるガム政策の展望

2025年現在、NPB12球団の中で明確にガム禁止を続けているのは巨人のみとなっています。ソフトバンクも工藤監督退任後は、特に厳格な禁止は行っていないようです。

時代とともに、スポーツ科学の重要性が認識されるようになり、パフォーマンス向上のためのあらゆる手段が検討される中、ガムもその一つとして位置づけられるようになってきました。

しかし同時に、プロスポーツ選手が社会に与える影響、特に子どもたちへの影響を考慮することも重要です。新庄監督が指摘するように、「口を閉じて噛む」というマナーを守りながら、パフォーマンス向上の恩恵を受けるという、バランスの取れたアプローチが今後の主流になっていく可能性があります。

 

まとめ:多様性が生む豊かなプロ野球文化

プロ野球界におけるガム政策の違いは、各球団の理念や価値観の違いを如実に表しています。

紳士的振る舞いを重視する巨人、科学的アプローチを取る千葉ロッテ、バランスを模索する日本ハム。

この多様性こそが、日本プロ野球の魅力の一つかもしれません。

ファンとしては、各球団の方針を理解し、選手たちがベストパフォーマンスを発揮できる環境が整うことを願うばかりです。

 

よくある質問(FAQ)

Q1: なぜ巨人だけがガム禁止を続けているのですか?

A: 巨人は「巨人軍は常に紳士たれ」という創設者・正力松太郎氏の理念を重視し、球界の模範となることを目指しているためです。2014年の創立80周年を機に、この伝統を改めて強調する意味で、ガム禁止を含む厳格な規律を設けました。

Q2: ガムを噛むことで本当にパフォーマンスは向上するのですか?

A: はい、科学的に証明されています。MRI検査により、ガムを噛むことで脳の前頭前野の血流が増加し、集中力や判断力が向上することが確認されています。また、咀嚼筋の活動により、瞬発力も約4%向上するという研究結果があります。

Q3: プロ野球選手はどんなガムを噛んでいるのですか?

A: 選手によって様々ですが、千葉ロッテマリーンズの選手は、ロッテが開発した「プロフェッショナルガム」を使用しています。これは通常のガムと異なり、噛んでいる間の硬さが変化しにくい特別な設計になっています。一般的には、キシリトールガムやスポーツ用ガムを使用する選手が多いようです。

Q4: 海外のプロスポーツ選手もガムを噛んでいるのですか?

A: はい、特にメジャーリーグでは多くの選手がガムを噛んでいます。アメリカではガムを噛むことに対する文化的な抵抗感が日本より少なく、パフォーマンス向上の手段として広く受け入れられています。サッカーやバスケットボールでも、試合中にガムを噛む選手が見られます。

Q5: 子どもがスポーツをする際もガムを噛んだ方が良いのですか?

A: 効果はありますが、注意が必要です。まず、口を閉じて噛むマナーを身につけることが大切です。また、試合中のガム使用については、所属チームやリーグの規則を確認する必要があります。安全面でも、激しい運動中は喉に詰まらせるリスクがあるため、適切な指導の下で行うことが重要です。