◆巨人10-1阪神◆
阪神は4日、見るも無残な1-10というスコアで「伝統の一戦」に3連敗し、巨人のドラフト1位左腕・高橋優貴に初勝利を献上した。ドラフト戦略も含めて、戦力の差を見せつけられた形だ。それだけではない。3連戦ではもう一つ、両チームの大きな差がハッキリと見えた。原辰徳と矢野燿大、両監督の采配だ。
矢野采配の問題点は何かと言えば、選手起用に尽きる。使われる選手だけでなく、周囲も納得できる起用が出来ているだろうか?
まずは先発投手の選択だ。6戦目とは言え、なぜ先発が浜地真澄なのか。高卒3年目右腕は昨季、矢野監督が率いた二軍で9試合に登板し、防御率1.00。「二軍日本一」を決めるファーム日本選手権では優勝選手にもなった。だが、失礼ながら二軍での話である。ポテンシャルはあっても、一軍でそれを発揮出来るとは限らない。ましてやプロ初登板(二軍戦の登板は数えない)、それがビジターでの巨人戦ともなれば、尚更のことだ。
案の定、である。浜地は初回に岡本和真に2点本塁打を打たれると、もう流れは完全に巨人へ傾いた。二死一、三塁では重盗をしかけられ、北条史也の悪送球も重なり3点目。阪神の貧打を考えると、勝負ありだ。
結局、浜地は坂本勇人にも3点本塁打を浴びるなど、4回6失点。「多少の緊張はありましたが、それ以前に自分の力を出し切ることができず、悔しさの残る登板になってしまいました。初回の失点だけでなんとか粘りたかったのですが、先発の役割を果たすことができず、野手の方々に申し訳ないです」。浜地はそう振り返ったが、起用した矢野監督が悪いと言う他ない。
3日に5回4失点で敗戦投手となった青柳晃洋しかり。矢野監督は、共に「日本一」を達成した過去の栄光を引きずっているのか、当時の主力選手たちを、殊更に過大評価しているとしか見えないのだ。
依怙贔屓と見られかねない起用。それが影響したと思われるのが、梅野隆太郎の一件だ。2日の試合で故障した梅野は3日に緊急帰阪。チームドクターの診察を受け、左足薬指の骨折と診断された。
だが、5日の広島戦からはチームに合流する。昨季ゴールデングラブ賞の梅野ですら、定位置は安泰ではないと感じているからだ。
矢野はかねてから、坂本誠志郎のリードを高く評価している。バッテリーコーチ時代の17年、正捕手候補筆頭の梅野に替えて度々、坂本を起用した。8月後半からは18試合連続で坂本がスタメンマスクを被った。
故障に負けずに出場を望む姿勢を、美談のように報じる社もあるし、故障の実際の深刻度は分からないが、ウカウカしていると、矢野が坂本を正捕手に定着させかねないのを、梅野は知っている。
まだある。開幕5戦目にして、ドラフト3位の木浪聖也(ホンダ)がベンチスタートだ。オープン戦で12球団最多の22安打を放ったが、開幕後は15打席無安打だった。
我慢が出来ず、すぐに結果が出ないとポジションを剥奪していては、選手が力を発揮出来なくなるし、育たない。その繰り返しだった昨季までの金本知憲前監督と同じではないか。目先の試合は大事だが、いずれにせよ4連敗中。北条史也でなく木浪でいくと決めたなら、翻すのはいかがなものか。
昨季20敗したリリーフ陣の再建へ向けて、クックに3点差でセーブをつけ、昨季は登板がなかった桜井俊貴を大量リードで投げさせる。そんな余裕すら見えるドッシリとした原監督を見るにつけ、リクエストで大袈裟に一喜一憂する矢野監督が色々と軽く見えてしまうのだ。