地獄のキャンプで野戦病院に ソフトバンク終盤失速【事件簿2019】

ソフトバンク 企画・連載

3年連続日本一を果たしたソフトバンクだが、故障者が続出して西武に逆転優勝を許し、「人災」という説が囁かれた。

工藤監督の方針で、体力強化を春季キャンプのメーンテーマに掲げていたが、走り込みの量はすさまじかった。第1クールと第2クールの6日間、午前中はボールもバットも使わず、走り込んだ。30メートル、80メートル、150メートルを何本もこなすメニューに、選手は膝に手をつき、和田毅らが苦悶の表情を浮かべる。足をつる選手も続出し、技術練習に支障が出ているのは明らかだった。

ドラフト2位右腕の杉山一樹がバントを処理した際に右足首を捻り、じん帯損傷と診断された。釜元豪も右膝痛を訴え、ふくらはぎの筋肉の炎症。周東佑京は左太もも裏の張りで、別メニュー調整となった。主力の柳田悠岐は右太もも裏、上林誠知は右の尻をそれぞれ傷めて別メニューで調整していた。

走り込みが「犯人」と思われる伏線はあった。フリー打撃に登板したドラフト4位・板東湧梧の直球が福田秀平の右肘を直撃。大事にこそ至らなかったが、板東は「一昨日100球投げたのと、今朝のランニングの疲れがあったので、自分の投球が続かなかった」とコメントした。要するに、走っていて疲れていたので制球が乱れたというのだ。

キャンプインの時点で、投手では股関節を手術したサファテ、肘を2度手術した岩崎に加え、石川は肘の違和感で不在。野手では腰を手術した明石、江川、塚田が手術後で不在で、中村晃も開幕前に自律神経失調症で離脱した。

開幕後も、投手陣ではスアレスと森が腕の張り。東浜は肘のクリーニング手術を受けたし、和田は7月10日に脚を痛めて降板した。野手は福田、グラシアルが脇腹痛、上林が右手首骨折。デスパイネは脚を痛めた。今宮は腿の張り、高田は右足に自打球を当てて負傷。川島は左肩痛。

長谷川に至っては4月16日に登録されたが、アキレス腱を痛めて18日に抹消された。育成から支配下登録したコラスも膝を負傷した。復帰した選手もいるが、ここに挙げた選手だけでも故障者は20人を超える。

王貞治会長はキャンプの走り込みを見て、次のように語ったという。「この練習が8月、9月に生きてくるんだ。勝負は秋だからね」。つまり、キャンプで走り込めば、シーズン終盤のスタミナに繋がるというのだが、某球団の元フィジカルコーチはこれを否定。「秋に繋がるかでいうと、繋がりません。シーズン中にいかに、少しずつコンディションを落とさずにいくかが勝負です」。

実際、最大8.5ゲーム差を西武に逆転された。「なぜケガ人が出ないんですか」。西武とのFA交渉の席で、福田秀平は問うたという。西武は今季、規定打席に8人が到達。木村文紀も規定打席まであと2打席だった。福田はクライマックスシリーズで高谷裕亮が負傷すると、万が一に備えて捕手練習した。

二月にこう書いた。「他チームがキャンプ序盤から紅白戦や練習試合に時間を割く中、体力強化に重きを置くソフトバンクは唯一の例外と言える」。過去にも負傷者が続出した地獄の工藤流キャンプは、巨大戦力だからこそ許される淘汰作戦にも見える。圧倒的な選手層と短期決戦の経験値で日本一にはなった。だが、長いペナントレースでの覇権奪回を目指すには、主力になるべく故障者を出さない工夫が必要だろう。