「だから言わんこっちゃない」という声がチーム内外から聞こえてきそうだ。2年連続日本一を目指すソフトバンクにけが人が続出し、「人災」という説が囁かれている。
21日、ドラフト2位右腕の杉山一樹がバントを処理した際に右足首を捻り、じん帯損傷と診断された。釜元豪も右膝痛を訴え、ふくらはぎの筋肉の炎症。育成の周東佑京は左太もも裏の張りで、別メニュー調整となった。主力の柳田悠岐は右太もも裏、上林誠知は右の尻をそれぞれ傷めて別メニューで調整しており、まるで野戦病院だ。
伏線はあった。7日のフリー打撃に登板したドラフト4位・板東湧梧の直球が福田の右肘を直撃。大事にこそ至らなかったが、板東は「一昨日100球投げたのと、今朝のランニングの疲れがあったので、自分の投球が続かなかった」とコメントした。要するに、走っていて疲れていたので制球が乱れたということだが、この「走り込み」が怪我の原因ではないかと思われるのだ。
工藤監督の方針で、体力強化をキャンプのメーンテーマに掲げているソフトバンクだが、走り込みの量はすさまじい。第1クールと第2クールの6日間、午前中はボールもバットも使わず、走り込んだ。30メートル、80メートル、150メートルを何本もこなすメニューに、選手は膝に手をつき、和田毅らが苦悶の表情を浮かべる。足をつる選手も続出し、技術練習に支障が出ているのは明らかだった。
某球団の元フィジカルコーチは「疲労がある中で打者を相手にするという経験と、疲労に打ち勝てるかのテストという意図があれば別ですが」と前置きした上で、こう続ける。「板東投手の例は当然、フィジカルトレーニングの影響です。(走り込みが)前時代的というのは否定できない」。
王貞治会長が走り込みを見て、次のように語ったという報道もあった。「この練習が8月、9月に生きてくるんだ。勝負は秋だからね」。つまり、今の時期に走り込めば、シーズン終盤のスタミナに繋がるというのだが、これも前出の元コーチは否定する。「秋に繋がるかでいうと、繋がりません。シーズン中にいかに、少しずつコンディションを落とさずにいくかが勝負です」。
他チームがキャンプ序盤から紅白戦や練習試合に時間を割く中、体力強化に重きを置くソフトバンクは唯一の例外と言える。過去にも離脱者が続出したという、地獄の工藤流キャンプ。これ以上、けが人がでないことを祈るばかりだ。